
「このままでは、去年取った乗用車の免許も取り消しになる」と言われあわててしまった。夜、練習を終えて帰った彼は、「神社に千円上げて拝んで来た」という。私は、必死なのだなと思った。
教習所にもう一度、検査をしてくれるよう頼み、補聴器センターで最新の箱型補聴器を借りて、クラクションの聞きとり練習をすることにした。
翌日の午前中、人のいない広場へ行ったが海風が強くて聞きとれない。午後、風の少ない科学館の駐車場で練習をした。夜、彼に促されて、また科学館へ行き暗い中で約一時間、練習をした。
試験場の検査は午後一時から。私のアルバイト先から公安の練習場をみると、旗が揺れており海からの風が吹いていることがわかり心配だった。試験場には私はもちろん、教習所の所長、指導教官、補聴器センターからも駆けつけてくれた。センターの人に補聴器を調整してもらい、箱型二個を背中につけて、いよいよ検査を受けることになった。
息子は係官に呼出され、車の前方十メートルで後向きに立った。クラクションを鳴らすと正確に反応する。合格が決まり一同ホットした。
だが、十月末の三回目の試験は合格せず、冬期間は試験が行われないので来春五月から再挑戦ということになった。
十一月、家でゲームなどをしていたが、就職を予定していた技工所で、「仕事に来て欲しい」との連絡が入った。しかし、本人はなかなかその気にならない。姉の車を乗り回している
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